匂ひ

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清香さんはここまで言うと、笹尾の腕を振り払って、ガッと髪をかきあげた。 そして、フンッ!!!と大きく鼻を鳴らす。 「人の男に手を出したらどうなるか、思い知らせてあげるわ!!!」 「清香っ、おま、何する気だよっ!!!! こいつは別にそういう関係じゃないって!!!!!!」 笹尾が慌てて清香さんの肩を掴んだけど、清香さんはそれすら力任せに振り払った。 「優一の嘘つき、じゃあなんでこの子が家にいるのよ。 なんで優一と同じボディソープの匂いがするのよ!!! 気付かないとでも思ったわけ!? 優一、浮気したらどうなるかよーーく教えてあげる。 じゃあね!!」 バタンッ!!!と勢いよく閉められた扉。 残された笹尾は、カクンと崩れるようにその場で膝をついた。 「あのアマッ・・・!!」 いや、 いやいやいや、お前が膝付いてる場合かよ。 あの女、私に人の男に手を出したらどうなるか、思い知らせてあげるって言ってましたけど、 は? 何?どういうこと? 私、どうなるの・・・・!!? 「っ、はぁっ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁっ、はぁ!!!」 恐怖で、息が浅くなる。 怖い、どうしよ、怖い、これからどうなるの、怖い、怖い怖い怖い怖い ネットに書かれるとか?家に来るとか?? ねえ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、どうなるのよ・・・!!!! 「詩っ、額の傷、とにかくなんとかしないと、」 笹尾が私の方に手を伸ばしてきた。 その瞬間、気持ちが溢れだしてきて。 「どう、しよっ、先生、どうしよぉっ・・・・!!」 涙が、滝のように零れた。 だって、こんなことになると思わなくて、 だって、 笹尾が彼女と別れたって言ってたし、 だって、だって、だって、だって、だってぇ・・・・!!! 「・・・詩っ、」 笹尾が、私の体を抱き寄せる。 どうしよ、怖い、怖いよ、あの女、絶対なにか仕掛けてくるに決まってる!! 「先生、私っ、わたし、」 「・・・・ごめん。全部、俺が悪い。」 笹尾が、苦しそうに声を絞り出した。そして、グッと私の制服を握る。 「絶対、詩に危害が及ばないように、なんとかするから、」 ほんと?ほんとにほんと? 私は、縋る思いで笹尾にしがみついた。 「助けて、先生っ・・・・・!!」
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