匂ひ

5/30
前へ
/536ページ
次へ
*** 笹尾と連絡先の交換をして、いつでも連絡が取れるようにした。 額の傷は、笹尾が丁寧に血を拭いて、大きな白い絆創膏を貼った。 その間、笹尾は顔をゆがめて「大丈夫だから」って繰り返し言ってきて。 笹尾の言葉では、私の不安は拭えない。 だって、どうしよう、もし私のことをネットに書かれたら? 学校名や名前を書かれたら、すぐに特定されてしまう。 そしたら、私どうなるの? 私の全てが終了してしまう・・・!! あの人、笹尾と結婚したいってしきりに言ってた、きっと、笹尾に都合の悪いことはしないと思うの。 だって、もし笹尾が女子高生を家に連れ込んでたなんてネットに書いたら、笹尾が職を失う。 結婚したいと思っている男を無職にするようなこと、するはずない。 狙いは私。 私を徹底的に痛めつけようとするはずなのよ・・・!!! 「あの人、絶対私を狙ってくる、 絶対よ、先生にはなにもしない、私だけに何かする気なのよ!!!」 笹尾に、恐怖心をそのままぶつける。 ソファで隣に座る笹尾の方に体を向けて、私は錯乱状態で口を開いた。 「ねぇ、どうしよ、私、もう学校にいけない、 だって、先生、彼女とは別れたって言ってたのにっ、ううう・・・、」 次から次へと溢れる涙。笹尾はそれを指で拭った。 そして、目を伏せて唇を噛む。 「・・・ちゃんと別れた、と思ってた。 ・・・ごめん。詩だけじゃなくて、多分清香は俺にも何か仕掛けてくると思う、」 「そんなわけない!!!」 私が、強く否定。 仕掛けるわけない、そんなはずない。 「分かるの、同じ女だから分かるの!! あの人は先生じゃなくて私が憎いんだってば! 先生っ、 せんせっ・・・・・ 怖いのっ・・・・・」 笹尾の胸にすがりついて泣く私。 怖い、 怖いよ、私、これからどうなるの。 笹尾は私の背中を撫でながら、苦しそうに口を開いた。 「清香と、もう一度話し合ってみる。 ・・・ごめん。」 お願い、笹尾。 助けて、たすけて。 すがれる相手は、笹尾しかいないのよ。
/536ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2383人が本棚に入れています
本棚に追加