匂ひ

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*** 天の香水の香りが、嫌に記憶にまとわりついてる。 保健室を出たあと、火照った体を落ち着かせるために、トイレに行った。 個室に籠って、頭を抱える。 やばいって、私・・・・・。 何その気になってんの。 だって、疼くのよ。 舐められたり、触られたりすると、 なんか、 いいかなぁ、って思っちゃう。 もちろん、ジジイや知らない男にこんなことされるのは無理だけど、天はよく知った仲だし、触られることに嫌悪感は全くなかった。 『・・・俺が言うのも変だけど、そーゆーコトにあんまりのめり込むなよ。 ろくなことに、ならねぇから。』 前、笹尾に言われたことを思い出した。 ・・・・別に、のめり込んでるわけじゃない。 ただ、少し流されそうになった、それだけよ。 私は別に、セックスにはまってるわけじゃない。 ・・・・でも、あのまま天と一緒にいたら、どうなってたのかな。 想像して、下腹部がきゅんっと甘く悶えた。 *** 教室に戻って、現実に引き戻される。 「詩ちゃん、見てアレ、やばぁい、」 千奈は私の元に駆け寄ると、福田さんの方を顎でしゃくった。 そこには、床にひっくり返ったお弁当をかき集めてる福田さんが。 何事・・・?? 「え、なんで、」 私の質問に、千奈が目を爛々とさせて答える。 「男子がね、ふざけておいかけっこしてて、福田さんに当たったの。 で、お弁当が、見事に吹っ飛んでさ(笑) 男子はそのまま教室の外に出ちゃったから、こーゆー感じ。」 背中を丸めて、昆布みたいな汚い黒髪をだらりと垂らしながら、床に散らばったおかずやお米を手で拾い集める福田さん。 その顔は、ぐったりとしていて、生気がない。 そこに、サヤカちゃんが追い討ちをかけた。 「ちょっとー、こっちにもお米が飛んできてんだけどーっ! ちゃんと綺麗に全部拾ってよね、汚いから(笑)」 福田さんは、何も言い返さなかった。 ・・・いつもなら、言い返してるのに。
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