献花台

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笹尾は相本くんをいじり終わると、みんなの方を見た。 「ってことで、とりあえず自己紹介をね。しようと思います。 名前と、どこ中出身で、えーと、あと、高校入ったら頑張りたいことをひとりずつ教えてください。 あ、好きなこととかでもいーよ!」 笹尾は朗らかにこういうと、また相本くんの方を見た。 「ほんじゃ、相本から。」 「はい!!!」 立て、なんて言われてないのに、勝手に勢いよく立ち上がった相本くん。 そして、名前と中学と、野球を頑張りたいってことを、でかくて野太い声で説明し始めた。 その間、私は心臓がキリキリしていて。 次は、私の番。 この流れだと、立って自己紹介をしないといけない。 そうすると、笹尾は私をガッチリ見ることになる。 ・・・・バレないか? 私が、白上晶の妹だって気づいたりしないか? や、大丈夫、顔はもともとそんなに似てなかった、それに今の私はメイクだってしてるし、私を白上晶の妹だと看破するのは困難なはず。 っ、 そもそもこの程度でビクビクしてたら復讐なんてやれるはずないんだから、狼狽えるな どう転んだって私は復讐してみせる、落ち着け。落ち着け。 「はい次。 えーと、有川さん。」 笹尾が、1回出席簿に目を落として、それから、私の顔を初めてまっすぐ見据えた。 「・・・はい。」 落ち着け、落ち着け、と心の中で何度も繰り返して、ゆっくりと席を立つ。 笹尾が、あの笹尾が私を見ている。 気付くな、気付いてくれるな。 「有川、詩です。和泉中出身です。 高校では、えーと、英語頑張ります。」 当たり障りのない、自己紹介。 可もなく不可もなく、何も話題が広がらない自己紹介。 それで、次の人にいってくれるだろうと思った、のに。
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