献花台

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「はい、じゃあ次、飯嶋さーん。」 千奈は笹尾に呼ばれると「はい!」と軽やかな声で返事をした。 千奈、笹尾のことかっこいいって言ってたものね、愛想良くして当然か。 「飯嶋 千奈です!中学は勝岡でした! チア部に入ろうと思ってます!」 千奈の自己紹介に、笹尾が「おっ!」と声をあげた。 「いーねー、じゃあ相本を応援したりすんのかな?? 野球の試合んときって、援団とチアいくよね?」 ああ、くそウザ、あいつがヘラヘラ喋ってるの見るとほんとムカつく、高校生のとき、まさにこの学校で人ひとりイジメで自殺に追い込んだくせに、なんで平気そうにしてられるの? なんでイジメした人って法で裁かれないの? なんでこんなところで平然とのさばってるの? みんな馬鹿なの?法っていったい誰を守ってるの? そのあとも、くだらない自己紹介が続いて、でも、流石にとある人物の時はちょっと、顔をしかめてしまった。 「福田 環(ふくだ たまき)です。 出身中学は別に言うつもりないです、過ぎた過去のことなので。 それから僕は、女とか男に縛られる生き方はしないので、とりあえず宜しく。」 早口で、妙にスンッとした態度で言い切った福田さん。 その態度と、自己紹介が異様で、みんな思わず目配せをしていた。 出身中学くらいいえばいいのに、ああいう言い方すると変な人認定されるに決まってる。 てか、一人称。僕って。 男や女に縛られないといいつつも、がっつり姫カットの黒髪ロングヘアで、 ああ、でも、ノーメイクだし、特段髪とか眉とか手入れしてるようでもないし、生まれ持った素材そのままで勝負してるところをみると、そーゆー意味では、女に縛られてないのかもね。 単純に、イタイ人、の可能性の方が高いけど。 「あの人ヤバくない?」 千奈が、クスクス笑いながら私に耳打ちしてきた。 私は苦笑いだけ返しておく。 種類が違うもの同士が混ざりあってもいいことないから、それぞれの距離感を保って、それぞれの世界で楽しんでれば、それでいいのよ。 似た人を見つけて、そこで楽しく平和に過ごしてれば、それでいいの。 干渉する必要はない。
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