献花台

13/34
前へ
/536ページ
次へ
後ろで、千奈が勢いよく手を上げるのを感じた。なんなら風圧さえ感じた。 私も控えめに手を上げる。 一応他に手を上げている人がいないか確認すると、あ、いた。 手をあげているのは、福田さん。 それが分かった瞬間、千奈の眉間に皺が寄った。 「・・・福田さんも、世界史やりたいの?」 千奈が、私の方に身を寄せて、いかにも『私たちふたりで世界史の係したいんだけど・・・』みたいな空気を醸し出す。 だいたいの子はここで空気を読んで、「あ、じゃあいいよ!」ってなるんだけどね。 それが女子の世界なんだけどね。 だけど、さすが、女とか男にとらわれない生き方をしてる福田さんは一味違った。 「まあね、僕も世界史やりたいかな。」 今ので福田さんの話し方は妙に人をイラッとさせるのと、空気を全く読めないことだけは十分伝わった。 はぁ。早く終わりたい、このくだらない係決め。めんどくさ。 「そっかー・・・」 こう言いつつ、千奈は私の方をチラリ。 福田さん、すごいな。こんな空気出されたら普通引くけどな。 「決まらないならジャンケンしろよー。」 笹尾が口を挟んできた。ジャンケンて。 「ジャンケン・・・」 案の定、千奈は少し嫌そうな顔。 ジャンケンの結果、福田さんとふたりでやることになった場合を考えてるんだろうね。 千奈は私に目配せした。 「・・・世界史、やめる?」 笹尾と接触する機会になるから、世界史が良かったけど、別に世界史にこだわってるわけじゃない。 私は苦笑いしてみせた。 「うん、別のや、」 「やっぱりやめます。」 は??? みんな一斉に福田さんの方を見た。 福田さんは事も無げに肩をすくめる。 「やっぱり日本史の方がいいかなーって。 僕、刀とか好きなんで。」 いや、別にいいけどだったら最初から日本史って言ってよ。てか刀って。なにそれ。 こうして、なんとか世界史の教科連絡係になったわけだけど、休憩時間、千奈がチラッと福田さんを見て言った。 「あたし、あの子嫌いかも~(笑)」
/536ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2399人が本棚に入れています
本棚に追加