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「ほら、ないでしょ。」
自分でも、分かってた。どうせないとは思ってた。
でも、こうやってはっきり見ると、この学校が、時間の経過と共にお兄ちゃんの自殺を『過去のこと』として勝手に、「もうそろそろいいでしょ?」って軽んじてるのが、ありありと伝わってきて。
なんで?
いつ、だれが、もう献花台は無くしていいと言った?
遺族が、未だ苦しんでるのに。
唇を噛む私を他所に、天がゆっくりとパリパリになった花の前にしゃがんだ。
「でも花あるよ。」
だから何。そんな汚い化石みたいな花。
「そんな枯れきった花、いつのかなんてわかんないでしょ。ずっと放置されてるのよ。」
吐き捨てるようにこういった私の横で、天は静かに手を合わせる。
で、こっちをくるっと振り返った。
「詩は手、合わせないの?」
「・・・・・。」
手を合わせて、いったい何を思えばいいの?
『お兄ちゃん元気ですか?』
『お兄ちゃん辛かったね』
『お兄ちゃん、会いたいよ』
・・・そんな子どもみたいな願い、小学生の時に死ぬほどここで伝えた。
願った。
思った。
でも、お兄ちゃんは戻ってこない。返事もない。伝わることも無い。
私は、半笑いで花を見下ろした。
「献花台、ね。
どんどん小さくなっていったの。最初こそ、花もたくさんあったけどね。
だんだん花が少なくなって、最後は、うちの家が持ってきた花とお菓子とジュースだけになった。
ある時なんて、お花供えに行ったら調子乗ったヤンキーが、供えてあるお菓子、笑いながら食べてた。
食っても別に怖くねーし、って。
おもしろいでしょ。」
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