献花台

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天は、反応に困っていた。 ショックを受けたような、衝撃を受けたような顔をして、視線を落としてる。 ほら、天。 私が経験しているのは、今までモテモテで、みんなに愛されて過ごしてきた天からしてみれば、「そんなことあるのか」って驚くようなことでしょ。 それ、まるごと受け止める余裕あるの? ないよね。 私とどうこうなりたいって、そーゆーことよ。 「じゃーね。」 天を置いて、立ち去ろうとした。 すると。 「待ってって!!」 天が私の腕を掴んだ。 振り返ると、天が小さい子どもみたいに唇を噛んでいる。 「離して。」 「っ、詩、ほんと、何するつもりなわけ!? なんでここに入学したの!? 詩の兄ちゃんが亡くなった、この学校で!!」 顔をパッとあげて、天が黒目がちの丸い瞳を潤ませて私を見つめた。 私は髪を払って笑う。 「だから、何も。」 ヘラヘラと笑ってみせれば、天は眉間に皺を寄せた。 「嘘つけ!!」 「ホントだってば。何回言わせるのよ。」 天、そろそろこの会話終わりにしない?話すだけ無駄。 「もういい?私、早く家に帰」 今度は、勝手に抱きしめるのね。 天は思い詰めた表情のまま、私の体を強引に自分の方に引き寄せて、そしてそのまま力任せに抱きしめた。
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