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肝試し
今よりは昔の方が、夏になるとお決まりのように肝試しが行われていたと思います。
私がまだ小学校低学年の頃、とある小学校で肝試しがありました。
なぜ参加したのかは覚えてないのですが、その時まで、私は肝試しがどういうものか知らなかったので、今で言う謎解きみたいな感覚で順番が来るのを待っていたのです。
舞台は小学校の校舎。数人一組で校内を回らなければいけないというルール。
私は大人しく校庭で順番を待っていました。
と、3階の窓に白い布を被った人影がゆらゆらと揺らめき消えて行くのが見えました。子供心に惹かれる布の揺らめきがあまりにも美しく今でも脳裏にはっきりと焼き付いている光景。
そうか、あんな感じの人たちが出てくるんだ――と思っていた私。
いざ、自分たちの番になり、肝試し会場である校舎に入って行きます。
しかし……
遭遇したのはベタな幽霊っぽい人たち(しかもかなり雑)だけで、白く揺らめく布を被った人は一人もいなかったのです。
肝試しが終わった後、腑に落ちなかった私は子供ながらの無邪気さで近くの大人に聞きました。
「白い布被った人いないの? あそこにいたよ」
3階の窓を指差した私に大人たちは言いました。
「あそこは肝試し会場じゃないから誰もいないし、布を被ったお化けなんて出ないよ?」
その人たちは、私が肝試しに怖がって幻でも見てしまったのだろうと、わざと明るい口調で答えてくれました。
でも違うんです。
肝試自体は正直怖くありませんでした。
何より私があの光景を見たのは肝試しの前だったのですから……
※実話です
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