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姉と私は好みが似ている。
食だけじゃなくて好きな芸能人や洋服の趣味もかぶるので、CDや洋服をシェアしたり、色々楽しめることが多かった。
「お願いします」
私が手を挙げると、長身の男性店員が振り返った。
切れ長だけどどこか優しい瞳が印象的で、目を奪われてしまった。
時がゆっくり流れているようだった。ドキドキしている鼓動だけがやけにはっきり聞こえる。胸の奥に懐かしい甘酸っぱさが広がり顔が見れなかった。
姉が私のほうを一瞥したような気がしたけど、目は合わさなかった。
彼は、姉がオーダーしたものを繰り返すと「お待ちくださいませ」と上品に微笑んだ。私の頬が熱を持つのがわかった。
彼がいなくなったのを見届けると、姉は「今の人、モデルみたい。イケメンだったね」と耳打ちするように囁くので、私はそうだねと素っ気なく返した。
まだ胸の奥には、甘酸っぱさが残っていた。
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