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お父さん、今日はサボります。
「結婚なんか絶対に許さん!」
父の言葉が、一瞬、何を意味しているのかわからなかった。
テーブルを隔てた向かい側の席では、婚約者の啓哉とその両親がぽかんと口を開いて父を見ている。
その瞬間、私はようやく悟った。
私は間違っていたんだ。
ううん、根本的に間違っていたのは、私ではないのだけど。
そもそも、『彼』を選んだことそのものが間違っていた。
そんなふうに、あれこれと考えても、もう遅い。
バカみたいに高級なホテル内のレストラン。
ここで私はもう後戻りできずにいる。
私たちのいるテーブルだけがしんと静まり返っていた。
「あの、紗智さん」
啓哉の母がようやく口を開いた。
「はい」
「あなたのお父さんは、結婚を大賛成してくれているって聞いたけれど……」
そう言って啓哉の母はチラチラと私の父を見る。
ええ、もともとそういう筋書きだったし、そのつもりでした。
あれほどたっぷりと父と話し合ったのに!
なのに、結婚んか絶対に許さん?
そんなの打ち合わせにないじゃない!
私がイライラしながら父を見ると、怒ったように窓の外に視線を向けている。
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