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「『紗智との結婚、大賛成なんですよ』ってやつ?」
「そうです、打ち合わせの通りそうしてくれていれば良かったんですよ」
「ってゆーか、両家の顔合わせにお母さんがいないって不自然だよなあ」
「それはまあ、予算の都合で……」
私が視線をそらすと山田さんは、ため息をついてから、こちらをぎろりと睨んだ。
「紗智ちゃん。あんたさ、あの啓哉君と結婚なんかする気これっぽっちもないでしょ」
ギクリとしたのが、山田さんにも伝わったのだろう。
山田さんは得意気に続ける。
「つーかまあ、考えりゃすぐにわかるよな」
「なにがですか?」
「婚約者との両親の初顔を合わせに、よりにもよって父親代行業者で俺を父親として呼ぶだなんて」
「それはその、私は両親と不仲で……」
「昨日の打ち合わせで、あんた両親と伊豆の旅行の話で盛り上がってただろ」
「勝手に人の電話聞かないでくださいよ!」
そう言ってから周囲の鋭い視線に、私はハッと口に手を当てる。
それから声のトーンを落として続けた。
「婚約者に本当の両親を会わせないからって理由で、あなたは約束とは違う振る舞いをしたってことなんですか?」
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