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「きな臭いにも程があるんだよ」
山田さんはテーブルを指でコツコツと叩いてから、こちらをぎろりと睨む。
「あんたさあ、啓哉君を騙す気なんだろ?」
「は?」
「俺は父親代行業はするけど、結婚詐欺の片棒は担ぐ気はねえぞ」
「違いますよ!」
そう言った私は、無意識のうちに立ち上がっていた。
周囲の視線がさらに痛い。
山田さんは「やれやれ」と呟いて、こう提案してくる。
「ここの中庭でも散歩するか」
ホテルの中庭はバラのアーチに噴水と、まるで西洋のお屋敷のようだった。
ふと啓哉の寂しそうな背中がよみがえる。
私は頭をぶんぶんと振って、それを追いだす。
山田さんは、やけにオシャレなベンチに腰掛け、それからおもむろに口を開いた。
「結婚詐欺じゃなきゃなんだよ」
「復讐です」
「復讐って……」
山田さんが「おっかねえなあ」と小さな目を見開くので、私は観念して白状することにした。
「啓哉は、アイツは、小学校6年の時に私をイジメてきたんです」
「ほお」
「休み時間にいちいちからかわれて、『ブス』だの『近寄るな』だの言われて、ノートやペンケースをアイツに盗まれたこともありました」
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