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「そんな恨んでる奴と結婚前提で付き合って、さぞかし苦痛だっただろ?」
山田さんの言葉に、私はアイツとのデートや今までの出来事を思い出した。
いつもアイツは私が行きたいところにデートに連れて行ってくれたっけ。
あれほしいなーと言えば、どんなに高い物でも買ってくれたな。
私のために車も買ってくれて、デートの時の送り迎えはもちろん、仕事で遅くなったり、友だちと遊んでいて帰りが遅くなったりしても、迎えに来てきてくれた。
『紗智はかわいいよ』と口癖のように言ってくれて、プロポーズをもしてくれて。
「あれ」
私はそこでハッと顔を上げる。
「私、もしかしてアイツにものすごい愛されていたのでは?」
「気づくの遅っ!」
山田さんはまるでコントみたいに、ずっこけてみせた。
それから、山田さんは座り直してからこう言う。
「啓哉君、俺と話していてもさ、紗智ちゃんのことしか見てないし、紗智ちゃんの話ばっかするし、俺は『相当惚れこんでるな』と気づいたね」
「そう、だったんですか……」
頭の中で『僕は紗智さんと結婚したいんです!』と言ったアイツの顔がよみがえる。
本当は、うれしかった。
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