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そんなふうい思ってくれて。
付き合ってから、優しく大事にしてくれて幸せだった。
だから、騙していることが後ろめたくてたまらなかった。
でも、本当はアイツも、私のことをからかって楽しんでるだけなじゃないか。
そんなふうに考えることで、自分の気持ちも、誰の気持ちも見ないふりをしてきた。
「こんなの、間違ってますね」
私の言葉に、山田さんが頷いた。
「本当の両親に、会わせてあげなよ」
山田さんがそう言って立ち上がった時。
「あ」と彼が言って動きを止めたので、その視線の先を私も追う。
そこにいたのは、啓哉だった。
「そうか、そういうことだったのか」
啓哉のその言葉で、彼がすべてを察したのだとわかった。
自嘲するように笑う啓哉を見ると胸が切り裂かれそうに痛い。
「ごめん。騙してごめん」
私はそう言って立ち上がり、頭を下げた。
「さよなら」
私がそれだけ言って立ち去ろうとすると、右腕を掴まれる。
「俺のほうこそ、ごめん」
啓哉が絞り出すような声で言った。
「イジメて、ごめん。紗智に復讐されてもおかしくないくらい、傷つけたよな」
「もういいの。本当に」
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