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息を切らせて庭を横切るわたしに、アーサーが塔の上から声をかけてきた。
「ジェミン!」
日が沈んで薄暗くなった空に、塔の上のアーサーは黒い影にしか見えない。
足を止めて見上げると、塔の上から鳥のような物が飛んできた。
それは一羽の蝙蝠だった。
蝙蝠は小さな嘴に星の欠片を咥えていて、それをわたしの手の中に落とすとまた飛んで行ってしまった。
手の中で星は小さく震え、やがて光を失ってピリンという音を残して消えた。
星はひとつひとつ違う音を持っているみたいだ。
いつの間にかアーサーが隣に立っていた。
「ジェミン、今日の分の星集めはそれで終わりにして、一緒に行きたい所があるんだ」
アーサーは自分の腕にわたしの腕を絡めるように引き寄せて歩き出す。
「どこに行くの?」
「魔女の館さ」
アーサーのイタズラっぽい声の響きに、わたしはそれ以上を聞かず、おとなしく彼についていった。
どこに行くのかと思えば、アーサーはお城の中に入っていく。
最初に彼に会った時のように、お城はたくさんの明かりを灯して夜の庭に白く浮かび上がっていた。
大きな扉はゆっくりと内側から開かれてわたしたちを招き入れる。
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