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「ジェミン、あなたの歌はいつもここにも聴こえていたのよ。でも少し前から様子が違っているから心配してたの」
それでアーサーに頼んでわたしをここへ連れて来てもらったのだという。
アーサーは誇らしげに笑ってエリルのことを見つめている。
「今から失礼なことを言うけど許してね」
エリルはそう前置きすると、向かいに座って黒曜石のような目でわたしをまっすぐに見つめた。
「ジェミンは魂は女の子だけど、体は男の子なのね」
わたしの姿を見てようやく謎が解けたと言うようにエリルは頷く。
「ジェミンの体は大人になろうと変化してるの。ジェミンが星に願おうとしていることは、その成長を止めてしまうことなのよ」
たとえそうだとしてもわたしは構わない。
わたしにとっては高く透き通った声こそがわたしのすべてなのだから。
わたしはエリルを睨みつけた。
「それで星を集めるのを止めろって言うんですか?」
エリルは首を横に振る。
「ここは薬店なの。喉に効く薬をあげるから飲んでみて。それとアーサーはあなたの魂を見ているの。だからお嬢さんと呼ぶし、あなた本来の歌声を聴いているのよ。だから怒らないであげてね」
エリルは小さな瓶をわたしに差し出した。透明な瓶の中には夜空のような濃紺の液体と、その中に星のように小さな白い粒が浮いていた。
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