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男の子には声変わりと呼ばれる時期があって、急に声が掠れたり喉が痛くなったりする時期を経て、大人の低い声に変わっていく。
デニスももう声変わりを終えて、喉にはくっきりと喉仏が突き出ている。
「パパはわたしの歌声が好きだってよく言ってくれた」
お城を出て門に向かう間、隣を歩くアーサーにぽつりとそうこぼしていた。
半年前にパパは病気で亡くなった。もう二度とパパには会えない。
たとえ会えなくても、夜空に向かって歌えばパパにわたしの歌が届くような気がした。
でもわたしの声が変わってしまったら、パパはわたしだって気付かないかもしれない。
アーサーはわたしをふわりと抱きしめた。
「大丈夫。ジェミンの歌を聞き間違えたりしないよ」
まるでパパに抱きしめられているみたいだった。アーサーの言葉がパパの言葉のように思えて、わたしは泣きじゃくった。
「ジェミン!」
どれくらい泣いていたのか、肩を揺さぶられて目を上げると、そこにはデニスが心配そうな顔でわたしを覗き込んでいた。
――僕の集めた星をあげる。
アーサーの声がどこかから聞こえたけれど、その姿はどこにも見えなかった。
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