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突然鳴り響いた拍手に、わたしは驚いて振り返った。驚き過ぎてしゃっくりが出る。
「だ、……ヒック、……誰?」
「この屋敷の主だよ」
白いドレスシャツに、黒い夜目にも折り目がくっきりついたシルクのズボンの若い男の人が立っていた。
グレーっぽい髪がサラサラと風になびいていて、口が思わずポカンと開いちゃうくらいの綺麗な顔。一度見たら絶対忘れられないくらいのきれいな顔をした人だ。
「嘘、ここはもう何十年も誰も住んでいない廃墟よ!」
わたしは歌を聞かれた恥ずかしさもあって、叫ぶようにそう言った。
わたしの両足はその間もしっかりと逃げる準備を整えている。
「まさか!」
男は片手を広げて後ろをごらんというように振り返る。ちょっと芝居がかった感じが、なんだか俳優さんみたい。
なんて、見とれてる場合じゃない!
驚いたことに、ついさっきまで廃墟だったお城に輝くばかりの灯りが点っていた。
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