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「今日は学校行きたくない」
泣き腫らした目で訴えるわたしをママは容赦なく家から放り出した。
最悪なことに今日は歌のテストがある日だ。こんなみっともないガラガラ声で歌えって?
歌は大好き。前は一日中だって歌っていたいくらいだった。みんながいい声だね、上手だねって褒めてくれた。でも、今のわたしの声は潰れたカエルの呻き声みたい。
パパが小鳥みたいだねって褒めてくれた声で歌うことは二度とできない。
それでも学校には行かなくちゃいけないよね。分かってるよ。でも……。
「ジェミン、お前その声で歌えるのか? がーがやぐぅよぞだァ〜どーってか」
クラスの悪ガキデニスがわたしをからかってくる。こんな奴のことは無視だ、無視!
ツンと顔を背けたわたしの頭に何かがコツンと当たる。机に落ちたのは丸めた紙。開いて見たら、デニスの落書きだった。カエルが胸の前で手を組んで歌ってる下手くそな絵。
わたしはそれをデニスに投げ返した。
授業中もひっきりなしに回ってくる落書きに、とうとうわたしの堪忍袋の緒が切れた。
「もう、やめてよ!」
突然叫んだわたしの声に、教室がしんと静まりかえる。
デニスの困ったような半笑いの顔を睨みつけて、わたしは教室を飛び出した。
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