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「昨日のお嬢さん、今日も歌いにきたの?」
船のマストの上にある見張り台みたいなそこに、昨日の夜出会った王子様みたいな彼がいた。
唇には優しい笑みが浮かんでいて、勝手に入ったわたしを怒ってはいないみたい。
彼もきっと勝手に入ってきてるのに違いない。だってここには誰も住んでいないんだから。
「どうして昨日あんなことを言ったの? わたしの声はガラガラだし軽やかでもない。ましてやお嬢さんでもない」
彼は不思議そうに首を傾げてわたしを見ている。もしかしてちょっと頭のおかしな人なのかも。
「君の声は僕には澄んだ鈴の音のように聴こえる」
「耳がおかしいのね」
わたしの嫌味な言葉にも、彼は全然気にしていない風に空を見ている。
「ここで何してるの?」
「星を集めるんだ。星を八つ集めると願いが叶う」
空に輝く星をどうやって集めるのって聞こうとしたけどやめた。
ちょうど日が沈んで庭が紺色の海みたいに闇に沈んだ時、キラリと光る物が降ってきた。
彼が手を伸ばすと、光はその手に吸い込まれるように消えた。
「ひとつ目」
彼の声に重なるようにチリンと音が鳴った。
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