星集めの庭

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「わたしも……。わたしも星を集めたい」 手摺に体を預けるようにして、両手を空に伸ばした。本当に願いが叶うなら、また元のように歌えるようになりたい。 「ただ星を集めるだけじゃダメだ。一番好きなことを星を集め終えるまで我慢するんだよ」 彼はそう言うとふわりと花が開くみたいに笑った。でもその後空を見上げた横顔は何だか寂しそうに見えた。 「あなたは何を我慢してるの?」 「一番好きな人に会うこと、かな」 その言葉に何だか胸がムズムズする。わたしにも会いたい人がいる。でも死んでしまった人には二度と会えない。 好きな人に会いたい気持ちを我慢するってどれくらい辛いことか、わたしにはよく分かる。 だからわたしも歌うことを我慢してでも願いを叶えたい。 「一緒に星を集めてもいい?」 もし、わたしが彼の分の星をとっちゃうことになったら申しわけないから、そう聞いてみた。ダメなら彼が集め終わってからでもいい。 「もちろん。二人の方が楽しいよ。あ、あっちに落ちたみたいだ。行こう」 彼はわたしの手を取ると滑るように螺旋階段を降りていく。 なんだか目が回りそうになって、必死にその手に掴まった。 広い広いお庭の片隅に、宇宙の彼方から飛んできた星がピロンと音をたてて落ちた。 星は芝生の中に吸い込まれていく。 「あぁ残念。地面に落ちる前に捕まえなきゃ」 「ねぇ、名前なんて言うの? わたしはジェミン」 「僕はアーサーだ」 背の高い彼の頭上を星がまたひとつ流れた。
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