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走り回ったあげくに捕まえられた星はひとつだけ。
それでも何だか心が軽くなっていた。
家に帰り着くと、玄関の前に誰かが立っているのが見えた。
「ジェミン、こんな遅くまでどこ行ってたんだよ?」
「デニス、あなたに関係ないでしょ」
いったいいつから待ってたんだろう。もしかして謝りにきたの? それとも教室を飛び出したわたしを心配して? でもまだ許してあげられる気分じゃない。
「待てよ」
無視して玄関に滑り込むと、後ろ手に戸を閉めた。
綺麗な声で歌えていた頃のわたしなら、きっと顔を赤くしながらもデニスに優しくできたと思う。そもそも教室を飛び出したりすることもなかった。
デニスが帰っていく足音を聞いているうちに、また悲しい気分になってきた。
……歌いたい。
喉の奥でぐるぐると渦巻いている気持ちを歌にして解き放ってしまいたい。
でも、星を集め終えるまでは歌わないって決めたんだ。
ぐっと唇を噛んでこらえる。
学校に置きっぱなしで帰ってきてしまった鞄がそこに届けられていた。
胸の中で星がリンと小さな音をたてた。
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