『進化論』

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『進化論』

fbd08950-0b91-46b5-ba3e-236c6ed53c38 小学6年生の圭太のクラスは、はっきり言ってできの悪いクラスだ。 テストはいつも学年最下位。やんちゃな子が多く、先生への態度もみんな悪い。 けれど圭太は勉強が嫌いではないので、他の子と違ってちゃんと授業を受けていた。 特に理科の授業は、身の回りのことに直接関わる知識が得られる感じがして好きだった。 そんな圭太のクラスに、2学期になったある日、新任の先生が担任としてやって来た。 先生は黒板の前で挨拶した。 「はじめまして、今日からみんなの担任になる佐藤です。 突然だが、先生はダーウィンの進化論を強く信じているんだ」 佐藤先生はハキハキした調子で言った。 「生き物は何十億年という時間をかけて、一番最初の未熟な姿から、よりよい姿へと進化してきた。 ダーウィンの進化論というのは、その仕組みを解き明かしたものだ。 先生はその仕組みに従えば、どんな生き物もーーーどんな人も必ず進化できると信じている」 先生の力強い話しぶりに、みんな思わず引き込まれていた。 「このクラスは、今はあまり良いクラスじゃないことはみんなも分かっているはずだ。 でも大丈夫。どんな生き物も進化できる。未熟な姿から、より良い姿へと変わっていける。 みんなでこのクラスを、よりよいクラスへと進化させていこうよ!」 先生の言葉はとても力強く、いつもは不真面目な生徒たちもみんな感動し、その言葉に聞き入っていた。 「……はい、先生!僕、頑張って今の自分から進化します!」 「わたしも、これからは頑張ります!」 クラスの中から、先生への賛成の声が上がる。さらに私も僕もと、たくさんの声が続いた。 クラスが新しい先生を中心にひとつになる中、 圭太だけが、先生の言葉の本当の意味に震えていた。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ......意味は分かったかな? このクラスは佐藤先生の提案で、「ダーウィンの進化論に従って」より良いクラスへ進化することを決めたみたいだけど、 ダーウィンの進化論っていうのは、各々の個体がよりよく進化するっていう意味じゃなくて、 生存に有利な種が自然淘汰で生き残り、 生存に不利な種は死滅することで、種全体が進化の形態をとるということなの。 それに倣って進化させるってことは......このクラス、どうなっちゃうのかな? 佐藤先生はもしかしたら、できの悪い生徒は「死滅させる」つもりなのかもね。 理科の授業が好きで、ダーウィンの進化論の意味を知っていた圭太だけは、これからこのクラスで起こることを想像して震えていた。 やっぱり理科の科目では、身の回りのことに直接関わる知識が得られるんだね。
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