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「亮ちゃんのくせに、いじわる」
小さな声が聞こえたかと思ったら、俺の唇に柔らかいものが触れた。今日は、なんだか女の子からキスされる日だ。
「今日、伊代ちゃんにお嫁さんにしてって言われたんだけど、俺は知花と結婚するからって断ったんだ。そしたらさ、しあわせになるのよって応援されちゃった」
もしかしたら聞いてたかなって思ったけど、伊代ちゃんとのやり取りを知花に話してみた。知花はふふっと笑った。
「まだ先の話だけどさ、俺と知花が結婚して、娘が生まれたとするじゃん? それで、パパと結婚するって言われたらどう答えるべきかすごく悩むよね。知花だったらどうする? 息子が生まれて、大人になったらママと結婚するって言われたら」
知花は「うーん」としばらく悩んだ後、満面の笑みで答えた。
「ママはパパと結婚したから、あなたとは結婚できないけど、ママもパパも世界で一番あなたのことを愛してるよって言って、抱きしめて、キスしてあげたいな」
「何それ、最高じゃん。あ、でもキスはほっぺにしてね。俺妬いちゃうから」
「もう、本当に亮ちゃんってバカね。でも、そういうところが大好き」
ちなみに、数週間後に会った伊代ちゃんは、「大人になったら陸せんせいと結婚するの」と言っていた。陸先生は、保育士のお兄さん。イケメンなんだって。ちょっと妬けたな。
おしまい
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