パパ

9/9
前へ
/9ページ
次へ
「亮ちゃんのくせに、いじわる」  小さな声が聞こえたかと思ったら、俺の唇に柔らかいものが触れた。今日は、なんだか女の子からキスされる日だ。 「今日、伊代ちゃんにお嫁さんにしてって言われたんだけど、俺は知花と結婚するからって断ったんだ。そしたらさ、しあわせになるのよって応援されちゃった」  もしかしたら聞いてたかなって思ったけど、伊代ちゃんとのやり取りを知花に話してみた。知花はふふっと笑った。 「まだ先の話だけどさ、俺と知花が結婚して、娘が生まれたとするじゃん? それで、パパと結婚するって言われたらどう答えるべきかすごく悩むよね。知花だったらどうする? 息子が生まれて、大人になったらママと結婚するって言われたら」  知花は「うーん」としばらく悩んだ後、満面の笑みで答えた。 「ママはパパと結婚したから、あなたとは結婚できないけど、ママもパパも世界で一番あなたのことを愛してるよって言って、抱きしめて、キスしてあげたいな」 「何それ、最高じゃん。あ、でもキスはほっぺにしてね。俺妬いちゃうから」 「もう、本当に亮ちゃんってバカね。でも、そういうところが大好き」  ちなみに、数週間後に会った伊代ちゃんは、「大人になったら陸せんせいと結婚するの」と言っていた。陸先生は、保育士のお兄さん。イケメンなんだって。ちょっと妬けたな。 おしまい
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加