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子どもが見る番組、と教育テレビにチャンネルを合わせると、伊代ちゃんは唇を尖らせて、「そんな子どもっぽいばんぐみ、見たくないわ」と言う。
「え、じゃあ、何が見たい?」
「ドラマのさいほうそう、やってるでしょ?」
ドラマなんか見るのか、と感心しつつチャンネルを変更すると、伊代ちゃんは満足そうに微笑んだ。それにしても、子どもの体温っていうのは本当に高い。伊代ちゃんが乗っている太ももにじっとりと汗をかき始めていた。
「亮ちゃん、大丈夫? 替わろうか?」
麦茶をみっつ、ローテーブルに置いた知花が心配そうに声をかけてきた。「んー」と中途半端な返事をすると、知花は「伊代ちゃん、私が抱っこしてあげる」と、それはもう本当に可愛い顔で言ったわけなんだけど。
「いや、パパがいいの」
伊代ちゃんはさっきよりも俺にべったりとくっついて離れなくなった。知花は「そっか、ごめんね」と言って、部屋を出ていってしまった。俺は追いかけたかったけど、伊代ちゃんが離してくれそうになかったから、それをただ目で追うことしかできなかった。
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