70人が本棚に入れています
本棚に追加
「伊代ちゃん、パパ喉渇いちゃったな。そこのお茶飲みたいから、ちょっとだけ降りてもらってもいい?」
「えー、ちょっとだけよ」
伊代ちゃんは小首を傾げてそう言うと、膝から降りてくれた。グラスをふたつ取って伊代ちゃんに渡すと、両手で持ってこくこくと飲んだ。しばらくしたら目が合って、「もういいの?」と訊くと、にっこり笑って頷いた。俺はグラスを受け取って、テーブルに戻した。
俺はお茶を飲みながら考えた。伊代ちゃんを待たせて、知花を探しにいってもいいだろうか。伊代ちゃんは賢そうだし、目を離したから何か起きるとは思わない。でも、今俺は『パパ』という役割を与えられている。そうやってぐだぐだと考えている間に、知花は戻ってきた。
「伊代ちゃん、今日のお昼ごはんはオムライスでいいかな?」
知花は笑顔だった。いや、頑張って笑顔でいる、という感じだった。可愛い姪っ子をたまにしか会わない俺みたいなやつに取られたら、そりゃ嫉妬もするし悲しくもなるよな。うんうん、わかるよ、と視線を向けると、ぶんっと音がしそうな勢いで目を逸らされた。俺はちょっと、いや、だいぶショックを受けた。
最初のコメントを投稿しよう!