パパ

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 知花は台所でオムライスを作り始めた。伊代ちゃんはいつの間にかまた俺の膝の上に座っている。柔らかくて、さらさらな髪を撫でてやると、伊代ちゃんはきゃあ、と声をあげながら、俺に寄りかかってきた。それから、俺の右手を掴むと、自分のお腹の辺りに移動させる。左手も同じようにさせられて、気づけば俺は伊代ちゃんを抱きしめるみたいな格好になっていた。  とんとんと野菜を刻む音が心地良い。知花のオムライス、楽しみだなぁとにやにやしていると、伊代ちゃんが俺の顔を見上げてきた。 「パパ、わたしね、ママのおてつだいでおりょうりよくするのよ」 「そうなんだ。すごいね、伊代ちゃんは」 「うん。今はまだおやさい切るくらいしかさせてもらえないけど、すぐにいろいろつくれるようになるんだから」 「そっかぁ。そしたらパパにも作ってくれる?」 「うん!」  すると、伊代ちゃんは体の向きを変えて、俺にぎゅっと抱きついてくる。 「わたし、大きくなったらパパのお嫁さんになりたい」  これって、お父さんが娘に言われたいナンバーワンの言葉じゃないか? 俺は伊代ちゃんの本当のパパじゃないけど、ぐっときちゃったな。うん、でも…… 「ありがとう。でも、俺は伊代ちゃんとは結婚できないんだよ」  頭を撫でながら、俺は伊代ちゃんの申し出を断った。
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