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「どうする? なんか美味しいものでも食べに行く?」
駅のほうに歩きながら声をかけると、腕を後ろから引っ張られる。
「知花? どうした?」
振り返ると、俺の肩に額を乗せてくる。戸惑いながらそっと頭を撫でると、肩がじんわりと熱くなった。
「え? 知花、泣いてる? どうした? 家戻る?」
焦りながら問いかけると、知花は小さく首を横に振る。
「嫉妬、してたの」
「あ……そうだよな。なんていうかさ、伊代ちゃんはきっと男の人が珍しかっただけだよ」
「違うの、わたしは伊代ちゃんに!」
知花は顔を上げて、口をへの字にした。
「子ども相手に嫉妬なんて、みっともないでしょ。でも、わたしだって亮ちゃんともっと……」
「もっと、何?」
同い年だというのに俺よりずっとお姉さんみたいにしっかりしていて、あまり感情的になることのない知花。そんな彼女がこんなことを言うなんて、俺は正直嬉しくて堪らなかった。もっと可愛いところを見たくて、知花の目を覗き込んだ。
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