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「パパ、抱っこして」
俺の大好きな、知花そっくりの小さな女の子がばんざいをして抱っこをせがんでくる。戸惑いながら知花のほうを見ると、にこやかに微笑んで頷かれた。
俺はまだ高校生で、子どもなんてもちろんいない。知花とは付き合い始めたけど、そんなこともまだしちゃいない。じゃあ、どうしてこんなことになっているかというと……
「すっかり懐いてるわね。じゃ、今日はよろしくね」
涼しげな笑みを残して、颯爽と部屋から出ていったのは、知花のお姉さんの伊吹さん。それで、俺のことを『パパ』と呼んだのは、その伊吹さんの娘、伊代ちゃんだ。パパではないんだけどな、と苦笑しながら抱き上げると、しっかりと俺の首に腕を巻きつけてきて、当分離れてくれなさそうだった。
今日は土曜日で、デートに行くつもりで知花を家に迎えにきていた。そしたら、伊吹さんが伊代ちゃんを抱えてやってきたのだ。どうやら急な仕事が入ったらしく、シングルマザーの伊吹さんは実家で伊代ちゃんを預かってもらおうと思ったらしい。ちょうど知花のお母さんは出掛けていて、帰ってくるまで俺たちで面倒を見ることになった。
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