彼の指に翻弄されて

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 言われるがままに店先で立って待っていると、真っ赤な高級そうなスポーツカーが目の前に停まった。降りてきたのは珀人さん。 「こ、これ珀人さんの車…?」 「まあね。あ、ちょっと待ってね、お店閉めちゃうから」 「いいんですか?さっきは休憩時間だって…」 「ああ、あれは嘘よ」 「嘘!?」 「だって、そうでも言わないとルリちゃん、お店に入らないでしょ?」 「それは、そうですけど・・・ええ?」  首を傾げて混乱している私に珀人さんは意地悪く微笑む。 「ほら、お店の看板にも今日は午後定休日って書いてあるでしょ」 「ほんとだ」 「もー…あんまりぼんやりしてちゃ駄目よ。悪い狼にすぐ食べられちゃうんだから」  その狼そのものな珀人さんは私の腕を引いて助手席へと押し込めてしまった。わたわたしている私を閉じ込めるようにシートベルトをカチリと止めた。 「あ、あの」 「あんまり嫌がらないでね。もし抵抗するなら、ココでまた泣かせちゃうわよ」 「ひぃ」  珀人さんの手が私の太ももを優しく撫でた。逆らえないと感じた私は助手席で小さくなっている他にない。  運転席に乗り込んだ珀人さんはご機嫌な横顔。 「あ、あの、珀人さん」 「なあにルリちゃん」 「えっと」  なんでもこんなことするんですか、と聞きたいのに言葉が出てこない。「遊びだ」って言いきられたら悲しすぎるし、それ以外の言葉を伝えられてもなんと返していいのか分からない。  珀人さんは綺麗で素敵で一挙一動にドキドキしちゃうけど、これが恋かときかれるとまだピンとこない。あんなに色々な事をされたせいで頭の中はまだぐちゃぐちゃだ。だって会ってまだたったの2回目で。でも、私の身体で珀人さんに見られてないところなんてもうどこにもない。  視線を彷徨わせて、ピンク色に染まったままのつま先をじっと見つめる。私の心もこんな風に目に見えればいいのに。 「あの、これからどこに」 「うふふ。イイトコロ」  わたし、いったいどうなっちゃうんだろう。
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