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4-1
そういや、と麻美がお昼休みに切り出した。魔界だと、産まれた小悪魔は親に育てられるんじゃなくて、面倒は専門の人がみるんだよね、育児とか情操教育とか。普通の場合ね。
──親はわからないの?
「親はわかる場合とわからない場合があんね」
──麻美は?
「わかんなかった……」
そうか、とわたしは自分の毒親を思い出して、げえっ、と太宰治のように吐き捨てそうになった。
──まぁ、麻美はわかんなくてもいいかもしれないよ。地上の家族ってわたしは嫌いだな。「サザエさん」とかさ、ホームドラマみたいのあるじゃん。ああいうの見ているとわたしはいらいらする。
それにしてもなんでそんな話題を突然?
「こないだの電気痙攣療法、まだ副作用の健忘があるみたい。なんか鈴の家族のことで凄い話きいた記憶があるんだけど……」
──ああ、それわたしの母親。
「亡くなったんだっけ?」
──そそ、去年死んだ。
今の麻美には、本などの文字じゃなくて、音声言語が必要だった。人の話を聞くこと、自分で話すこと、どちらもPTSDの恢復に必要なもの。
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