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 そういや、と麻美がお昼休みに切り出した。魔界だと、産まれた小悪魔は親に育てられるんじゃなくて、面倒は専門のがみるんだよね、育児とか情操教育とか。普通の場合ね。  ──親はわからないの?  「親はわかる場合とわからない場合があんね」  ──麻美は?  「わかんなかった……」  そうか、とわたしは自分の毒親を思い出して、げえっ、と太宰治のように吐き捨てそうになった。  ──まぁ、麻美はわかんなくてもいいかもしれないよ。地上の家族ってわたしは嫌いだな。「サザエさん」とかさ、ホームドラマみたいのあるじゃん。ああいうの見ているとわたしはいらいらする。  それにしてもなんでそんな話題を突然?  「こないだの電気痙攣療法(ECT)、まだ副作用の健忘があるみたい。なんか鈴の家族のことで凄い話きいた記憶があるんだけど……」  ──ああ、それわたしの母親。  「亡くなったんだっけ?」  ──そそ、去年死んだ。  今の麻美には、本などの文字じゃなくて、音声言語が必要だった。人の話を聞くこと、自分で話すこと、どちらもPTSDの恢復(かいふく)に必要なもの。
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