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4-2
監視と猜疑が酷かった、と、わたしは麻美だけでなく誰ともなしに語り始めた。
一番酷かったのが、中学のときの修学旅行の帰りね。わたし、修学旅行の途中でお財布をなくしちゃって、もしかしたらそれはわたしのことをよく思ってなかった生徒が盗んでいったのかもだけど……とにかくお財布をどこかへやっちゃったの。
そんなことがあったのか、と麻美。
先生からお金を貸してもらって、多少のお土産なんかは買えたり、自由行動のときに移動したりなんだりのお金はなんとかなったんだけど、修旅から帰ってきたらなんて言われたと思う。
「うーん、なんだろう……」
それがね、帰ってきて、沓も脱がないうちに、「なくしたといって自分の金にしたな、返せ! 嘘吐き!」だったのよ。
わたしはほかにも母親のことを麻美に話した。
「魔界に連れてって根性叩き直したほうがいいなそれ」
そうよねえ、わたしは苦笑した。今頃、ナチュラルに地獄にいそうだけどな。
──聞いてくれてありがとう。
「しかしさあ、うちみたいな小悪魔が聞いても胸くその悪い話だよな」
だね、とわたしは、まだ口をつけていなかった焼きそばパンを食べ始めた。お昼ごはんも麻美と一緒。
Ifの話はあんまりするものじゃないけれど、あんな毒親、わたしが殺すべきだった。
それが毒親をもった娘の責務ではなかったろうか。
この悔恨は一生残るだろう。
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