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 麻美の飛行訓練はどんどん進んでいた。  膝、肘、それに頭にプロテクターを装着して、緑色のジャージ姿で地上二メートルぐらいの高度をぱたぱたと羽を動かして飛んでいる。もちろんジャージも羽や尻尾のために窓のような部分とそれを普段隠す布地がついている小悪魔専用のものだった。  浅井さんが重力異常値(GAV)を観測しつつ、おそらく緊張しているだろう麻美に声がけしながらリードしている。  二メートルはかなりの高度なので……少なくても今の麻美にとっては……、聖パルの人外(にんがい)ラボから四名のスタッフが空気式救助マットを麻美の移動に合わせて引っ張っている。  スタート地点からだいぶ飛べている。  「最高記録ね」と浅井看護師。「思春期病棟の壁まで来たら上昇してみて」  麻美は飛行を水平から上昇へ切り替える。
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