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 それは本当に唐突だった。  雨の放課後、帰ろうとしたとき、麻美が、聖パルのミルクホールに行きたい、と言い出したから。  二人で一緒の洋梨のホワイトパフェを注文して、出されたら窓際の席に座る。雨はしとしとと弱いけれど、季節的に少し蒸す。  あのさ、と麻美が生クリームをスプーンに大量にすくいとって口に運びスプーンの裏表まで舐めると切り出した。  これ、今だから話せる。ラボの人にもカウンセラーさんにも浅井さんにも言ってない……と麻美が話しはじめた。  「ヤバい話じゃないと思う、いや少し、いやうんと? ヤバいかもだけど、これを言葉にしないとだめなのは直感でわかる。で、今、鈴に聞いてほしいな。パフェ食べながらでいいからさ」  わたしは洋梨をスプーンでぐりぐりやって切り出して、食べながら頷いた。  ……まだ魔界にいるときに、すごい魔術師に召喚されたことがあんの。そこまで言うと、麻美は(もく)した。  ──続けられるなら続けて、いやなら聞かないから。  ……どこだったのかな、とにかく海に面した強制収容所があって、そうそう、そこ昔のお城をそのまま収容所に転用してんのね。その中に、高名な魔術研究者がいたの。
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