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 「ごきげんよう!」  とわたしは自分を景気づけるためにもちょっとトーンを上げて挨拶し、教室に入る。  「鈴、ごきげんよう」  麻美は先に着席していた。  あの収容所強襲の一件はその後、ラボの浅井看護師やカウンセラーさんにも話せたらしい。  麻美はイメージ・トレーニングも重ねている。  「いいニュースがあるよ」と彼女。「イメージ・トレーニングが楽しくて楽しくてたまらないの! たぶんもう飛べる!」  ──やったじゃん麻美! こないだからけっこう飛べてるもんな。  わたしも切り返した。  ──麻美が電気痙攣療法(ECT)で入院しているときに目視した、国際宇宙ステーション(ISS)〈きぼう〉が今夜また見られるよ!  凄い?  と、麻美が聞くからわたしは頷いた。凄い凄い。  放課後、麻美とわたしは天文部の部室を訪れていた。  天文部でも当然のことながら盛り上がっていて、うちらは歓迎された。部員は三人だけ。  「あまり受けない部なのに、来ていただけるとは感激です」  と、天文部部長の小野木(おのぎ)さん。  「先生が付き添いで……まぁ屋上へ出るわけですし……ISSの時刻少し前までは、パソコンでも資料の本でもなんだって好きにしてください」  そう言って、インスタントのコーヒーを出してくれた。  あ、そうそう、と小野木部長が付け加えた。
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