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 あとになって考えれば、麻美はもう部室でオセロを遊んでいるときからの計画だったのだろう。ときどきスマホをいじっていたりしていたから。  天文部の顧問の先生のほかに、ラボの浅井看護師が麻美から呼ばれてやって来た。浅井さんはちょっと大きめのバッグを持っている。  高等部棟の屋上は夜風が快適だった。  白衣を着ている浅井さんがこの場所に一番ふさわしい恰好って気がする。麻美も本当は小悪魔の正装である、セパレートのラバー服になりたいのではないか。  「今回、ISSは北北西の方向なのであそこにある時計塔のあたりから出現します」  と、天文部部長の小野木さん。  撮影担当の部員が、なんだか兵器のようにものものしい望遠レンズをつけたカメラを準備していた。  撮影できるんですか? とわたしが問うと、「航行し始めて、すぐにファインダーで追尾できれば、バッチリ撮れます。ぼやけはしますが、ISS本棟とソーラー・パネルがわかるぐらいには」  と、三脚にマウントしながら答えてくれた。  ……七時半になった。
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