8-3

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 わたしはなんだかそれだけで涙ぐみそうになる。  おつかれさま、と言いかけた天文部の部員たちを(さえぎ)って、浅井さんがラボに連絡をとっている。  「空気式救助マットとその移動要員四名、至急高等部棟まで」  そこからはスローモーションのようにものごとが動いていった気がする。  麻美は羽や尻尾を制服から出して、きゅっ、と鳴いた。  「今ならいける、絶対!」  浅井さんがそれを受け、「できるわ、自分を信じて。絶妙のタイミングね」  こんな麻美を見たことがない……。  浅井看護師は二人ぶんのプロテクターを用意している。  彼女のスマホに着信が。準備できました、とスマホからのスタッフの声が聞こえる。麻美は浅井さんから受けとったプロテクターを装着し、特定小電力無線機を制服のポケットに入れ、インカムを着けた。  重力異常値(GAV)確認! いつもの比じゃないわよ、と浅井さん。  「鈴は高いところ大丈夫なんだよね」  うん。  「原田さんもプロテクターを着けてね」  浅井さんが渡してくれた。  着け終わると、じゃあ右手貸して、と麻美。わたしは麻美の手をギュッとつかんだ。
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