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8-4
その瞬間、麻美の魔力というか特殊な力がわたしの身体へも伝播した。
身体が軽い! てか重力がない!
「ちょっとだけ浮いてみるよ、どう?」
え、え、これ凄い!
そして徐々に上昇していく。
二メートルもある屋上のフェンスの高さを超えて浮かんでいった。
「鈴はなにも考えないで、手を離さなければ大丈夫だし、コントロールはうちが全部やるし。
一旦はフェンスの上に乗った、下を見るともう万が一のときの救助用マットが準備されている。
浅井看護師が開始を告げた。
「下の救護班も準備完了、マットが追いつかないほどの高速はやめてね」
はい、と麻美。
「鈴、飛ぶよ」
麻美はフェンスを軽く蹴ると、群青色が透けて見えるような黒い夜空が動き出した。初等部棟、中等部棟、寮棟がゆっくりと後ろへ流れていく。
グラウンドに引かれている白線もまた。
小悪魔ってこういう世界を見ているんだ……。とわたしはふと思った。
「グラウンドの端で降下する? 折り返す? もうちょっと速くても大丈夫よ。オーバー」と、浅井さん。
「了解。折り返します。オーバー」
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