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 聖パルを囲む森林より高く上がっているので、周囲の街並みも美しく見えた。M駅や電車の灯り、車のヘッドライト、日常の光なのにこんなにも尊く光っているなんて。  「鈴、ターンするからびっくりしないで」  え、うん。  麻美は身体を水泳のクイックターンのようにして復路につく。  一瞬めまぐるしくなる光と闇のラッシュに、脳が快感物質を分泌させる。  小悪魔が飛べる理由、そして飛べなくなったときの喪失感がわかる気がした。わたしは、ふとやはり飛ぶことに執念を燃やす登場人物がしばしば登場するJ・G・バラードの作品群を思い出していた。  麻美の横顔を見た。  真剣だけど、どこかに余裕が感じられる表情。  もう高等部棟に戻ってきた。  浅井さんと天文学部の小野木さんをはじめ全員が手を振っていた。  フェンスを超える前に、ホバリングして、麻美がお願いした。  「こうやって空中にいるところ、撮れますか?」  「大丈夫です。すぐレンズ替えますから」  麻美とわたしは空中に立っているような感じで停止している。  「鈴、空気が重力異常で流れないかもだから、口と鼻の前で手をくるくる回して。酸欠になっちゃう」  やっと、天文部の撮影班の人がレンズを替えた。  「撮りますよ……!」
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