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丘に寝そべっていたはずが、気付けば銀砂の海岸に佇んでいた。
夜の海はしかし昏いばかりでなく、天上の星々を映して、赤や金の宝石が波間にばら撒かれていた。
海は凪で、とても静かだ。僕はどうしてしまったのだろう……眠りこけてしまったのか。
銀河の海を、イルカがジャンプして、宝石を撒き散らしながら光の輪をくぐった。
「星になりたいのか」
ふいに、後ろから声を掛けられた。
振り向けば、一人の少年が立っている。少年はまだ声変わりもしていない様な声質だったが、それを僕は懐かしく感じた。
その面影についても、僕のよく知っているものだった。
少年は幼き日の僕だ。
突然の事だったのに、驚く事もなく。この不思議な空間で、昔の自分と邂逅する事は必然である様な気がした。
「ああ……。もう疲れた」
問い掛けの返事をしながら、しかしこの少年は、恐らく僕ではないのだろうという事もよく理解していた。
少年の声や姿形こそ懐かしさを覚えたが、その雰囲気からはちっとも僕らしさを感じなかったからだ。というより、人間と接している感じすら、しなかった。
「君は何なんだろうね」
一応問うてみたものの、返事は無かった。
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