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少年は銀砂の海岸を歩いた。
彼が歩く度に、靴裏から零れ落ちた砂がキラキラと燐光を放った。
燐光は何に反射しているのだろう。今日は、新月のはずだった。
僕から二メートル程の位置で彼は止まり、夜の海を見る。僕もそちらに目をやり、はっと息を呑む。
海は、いつの間にか広大な銀河になっていた。
「星の流れる空に三度願えば、それは叶う」
ふいに少年が口にした。
「星が流れ切る前に三度、だろう」
彼程の年頃に聞いた伝説は、確かそんな内容だったと思う。
「別に同じ星である必要はないよ。今日は、ほら、沢山の星がその命を終える日だからね」
流星群の放射点から、次々に光が旅立ってゆく。地上からは、光が弱くて見えないものも、ここからはよく見えた。
「今キミは、二度願っているから」
「え?」
「星になりたいんだろう?」
「あ……ああ」
星の海に視線を戻すと、流星はイルカのように昏い宇宙を泳いだ。
「それが心からの願いなら、もう一度。それでキミは星になれるよ」
うん、そうだ。
「僕は、星になりに来たんだ」
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