孤独の星

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体という器が消失するのを感じた。 魂ーーと呼ぶのがあまりに陳腐だというのならば、意識だけが残った。 しかしその意識はだんだんと宇宙に近しいものになってゆき、個という概念は薄れてゆく。 恐らく、ここまでの間に、人間の時間にすると相当な年月が流れた。 ああ、やっと僕は、美しく壮大なものの一部になれる。 僅かに残っていた、人間としての意識の欠片は心底安堵した。 (ひとつ、いいかな) 「何」 (何で僕を星にしてくれるんだい) 「声が、聴こえたから」 (声?) 「この広く昏い海で泣いている声。孤独の声。ーーキミらは、それを宇宙の音楽などと呼んでいた様だ」 ああ、そんな話も。聞いた事がある。宇宙には旋律が存在すると。 決して美しい調べではないそれは、僕と同じ、孤独の星の嘆きだったのか。 (僕の他にも、星になった者が?) 「いつの時代(とき)も、どこの惑星(せかい)にも。星の子どもとして生きるのに、その器から零れ落ちる者がいるみたい」 (孤独の星の嘆きは、いつまで続くんだろう) その問いの答えを待つ頃には、僕はすでに星になった。 だからもはやどちらでも良かったのだが、少年は答えてくれた。 「さあ。でも、少なくともキミはもう泣いていない」 ーー孤独の星よ、孤高に生きよ。 ーー星に生まれし生命を、時に育み、その滅びを見届けよ。 ーー終焉にこそ眩いほどに輝いて、次の嘆きを救いたまえ。 〈了〉
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