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「どうしたの?」
「実は、隣の国のおきさき様はひと月前からランク外でした」
「ええっ!なぜ?!」
「自分の地位を過信して、ボトックスを怠ったのです。今ではそれはもうひどい有様で…」
「まぁ。では2位は王様の?」
「元カノ様でいらっしゃいますね。ご覧になりますか」
「いいえ、いいわ。来週正式なお客様としてご招待しているの。実物に会えるから」
「誰に会えるって?」
突然涼やかな声が部屋に響き渡りました。
「王様!!」
そこには部屋着にガウンを纏い、いたずらそうに眉を上げる王様の姿がありました。
小間使いたちは一斉にひざまづくと、静かに部屋から出ていきました。
「おお、王妃。なんだか久しぶりに会った気がするよ。おいで」
差し伸べられた手を取ると、そのまま腕の中へ引きこまれます。
「ちょっと顔を見せてごらん」
「いいえ、まだお化粧をしていませんの。恥ずかしいわ」
「いいから」
両手で頬を救い上げられて、正面から顔を覗き込まれると、王妃は観念して王様の青い瞳を見つめました。
「王妃。最近、綺麗になったね」
「あっ」
それはいつか鏡に言わせたいと思っていた言葉でした。まさか王様に言ってもらえるなんて…。思わず頬をバラ色に染めると、王様は「ますます美しい」と言って、王妃に顔を近づけます。その時です。
「あー!ちゅーしてる!!」
「ほんとだ、ちゅーしてるぅ!!」
ふたりの王子が部屋に飛び込んできて、はやし立てました。
「おおーっと、見つかったか」
「お父様、まだお母様に会ってはいけないと約束したでしょう?」
両腕を胸の前で組んだ姫が言います。
「ごめんな、もう限界だったんだよ、姫。お父様はお母様が大好きなんだ。こんなに顔を見ないなんて結婚してから初めてだ」
「まぁ」
優しく両手を包み込まれて、王妃は驚いてしまいました。
「ではなぜ視察から帰ってきてくださらなかったの」
「行く先々で引き止められてな。美しい王妃と可愛い子供たちにそんなに会いたいかとからかわれるので、仕方なく…ロイヤル連合ではまだ新参者だから帰りたいとも言えなくて、狩りだゴルフだと付き合わされたよ」
「そうでしたの」
「やっと帰って来たら執事に王妃が疲れていると言われて、どんなに心配したか。子供たちの添い寝を引き受けて、君の大変さがよくわかったよ。今まで任せっきりで悪かった」
「いいえ。私こそ、子供にばかり構って、王様の青い瞳をきちんと見ていなかったのです」
「王妃…」
ぎゅーっと抱きしめられた瞬間「ぼくもー!!」「わたしもー!!」と子供たちが割って入ってきました。
「よし、来い!」
全員でぎゅうぎゅう抱きしめ合って、大きな声で笑いました。
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