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小間使いが部屋を出ていくと、すぐに姫がやってきました。
「お母様、絵本ってこれのこと?」
差し出された絵本の表紙には、それは愛らしく美しいお姫様と7人の小人の絵。そして飾り文字で「白雪姫」と書かれていました。
「まぁ、これ私なの?恥ずかしいわ。小人たちはちょっと美化しすぎよね?」
「もう10年以上前だもの。今では全員中年よ」
この姫は誰に似たのか、少し毒舌のようです。そんな娘の口ぶりには慣れている王妃は、すぐに本題に入りました。
「さっき言っていた魔法の鏡って、これのことじゃない?実家から送られてきたのよ。ほら見て、あなたはそのままの姿なのに、私だけが歪んでいるでしょ。これは魔法か呪いに違いないわ」
「お母様。確かにこれは魔法の鏡かもしれないけれど、正常に映っているわ」
「え、どういうこと?」
「魔法の鏡はね、尋ねたことに答えてくれるの。映すのは正常な姿よ」
「つまり?」
首をかしげる王妃に、姫は小さく舌打ちします。
「ちっ、そろそろ察してくれないかしら」
「え?何か言った?」
「なんでもない!鏡を確かめる方法は1つね。この通り言ってみて」
姫は絵本を開くと、あるページを指さして言いました。
「どれどれ?わかったわ。やってみるわね」
王妃が鏡に向かって絵本の中のセリフを言いました。
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのはだぁれ?」
すると鏡が真っ暗になり、しゃがれた低い声が聞こえてきました。
「世界で一番美しいのは、隣の国のおきさき様です。数年前までは違う姫でしたが、今はあのお方が一番美しい」
「なーんですって?嘘おっしゃい。あの人はもう50代後半よ?さすがに世界一ってことはないでしょう」
「はい、再婚されるまではトップは別の方でした。でも今はあのおきさき様が…」
「待って。再婚って、3年前よね。確か流れ者の医者と結婚したのだとか。本当なの?」
「はい、その通りです。その医者は美容整形の権威で、ありとあらゆる手を施し、今のおきさき様はこんな感じに」
鏡が一瞬ぼやけると、全く別の顔を映し出しました。それは最後に見た時以上に若く、美しくなっている継母の顔だったのです。
「えー!!」
王妃と姫は一緒に声を上げました。
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