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空ばかり見ていた一華が、初めて眼下の光を見る。
「皆、誰かと過ごしてるのかな」
独り言のような呟きに、颯太が応じる。
「そういう人も多いんじゃない?」
「同じだね。私たちと」
「……俺でよかったの?」
夜景へ向けた眼を動かさない問いかけ。
「うん」
迷いのない頷き。
颯太は一華の横顔に視線を移す。
「それは」
真横のそれを前から見ようとするように、
少し屈んで覗き込む。
「気が変わったって捉えていい?」
「だめ」
かすかに笑んだ口元が即答を放った。
柔く夜風が流れ、颯太がゆっくりと姿勢を戻す。
ため息がひとつ吐かれた。
わざとらしさと、本物の落胆がまじり合う。
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