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「…うん」
颯太は一華の横顔を眺める。
「他の人だったら、もっと本気で腹が立つし、
ショック受けたりとかもあるけど。
なんでかな、君だと嫌じゃない」
「…うん」
「君とは──それこそお互い歳をとっても、
こんなこと言い合う仲でいられると思ってたなぁ」
星を向く一華の横顔を、颯太は眺め続ける。
すぐ隣にある、こちらを振り向くことのない瞳を見つめて、それから。
「俺と結婚してくれませんか」
その一言を放った。
「………」
何も聞こえなかったかのような沈黙を挟んで、
一華の眼差しが颯太を向く。
「……なんで?」
紡がれたのは返事ではなく、静かな問いかけ。
「好きだから」
「私は好きじゃないよ」
「知ってる。今も言われたし。
…やっぱり、男は恋愛対象にならない?」
「……ならない」
星を見る時と変わらぬ表情に、
また生真面目な色が宿る。
その表情へ向けて、
颯太もまたそれまで通りの顔と声で、
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