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丘の上にて
「ねぇっ、
今見えてるのが全部流れ星になるのかな」
空を受けとめようとするように、
一華は両手を上へ伸ばした。
遠い街の灯りの中、その姿が淡く影のようになる。
「まさか。これから見えるんだよ」
急斜面を登りきった颯太が空を見ないで言う。
茂る枝葉をくぐり抜けると、
夜景を臨む一華の元へ歩いてゆく。
一華は伸ばした手を頭上で組んだ。
星をちりばめた闇夜に手の形の影が浮かぶ。
ぬるい夜風が、膝の周りに薄いシルエットを揺らめかせる。
「なぁんだ。意外と少ないな」
「少ないなら、ここまでニュースにならないと思うけど。……ところでさ、なんでこんな場所に来るのに、スカートなわけ?」
「ん? お気に入りだから。
スカートよりパンツのが動きやすいって思い込みよ、時と場合によるでしょう」
「深夜に立入禁止のフェンスくぐって、道なき道を軽く登山する場合はスカートで支障ないんですか?」
「ない。
もしあったとしても、今夜ばかりは強行するわ。
絶対にこれを着るって決めてたの」
ほどいた両手を一華は腰へ持ってゆく。
勢いよく手を当てられ、膝丈のフレアスカートがぱん、と小気味良い音を立てた。
今は闇に沈むその色が日の出のような朱色であることを、颯太はよく知っている。
「それって、俺とここへ来るから?」
夜に半分溶け込んだ横顔を見ながら、
颯太は尋ねた。
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