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璃音は美奈人とこのような密約を交わした。さすがに「キレイになったら付き合ってやる」なんて上から目線たっぷりの言葉は言うことは出来ない。
そこで、璃音は美奈人の好みを聞いたという形にして貴美をキレイにすることにしたのだった。璃音はショックで寝込む貴美の家に見舞いに行き、その旨を伝える。
「俺、あいつと高校の時からずっと一緒でさ、あいつの好みだったら手に取るように分かるんだ。当然、あいつが付き合ってきた女もどんな感じかって言うのはキッチリ把握してる。そこでだ、あいつの好みの外見になってリベンジしないか?」
「駄目に決まってる…… 美奈人くんの付き合ってきた女って、あたしみたいなブスと違って可愛かったり美人ばっかりでしょ? 初めから問題外なのよ…… あたしなんて」
貴美には悪いが、その通りだった。美奈人の付き合ってきた女性は、皆が皆、クラスのアイドルぐらいの外見を持つ。大学時代に至っては読者モデルをしているような見ただけでクラっと立ちくらみがするような美人とも付き合っていた経験がある。外見だけなら貴美と比べれば勝負にもならない。
璃音はこのことを知っているだけに半分は「無謀な勝負を挑んでしまった」と後悔し始めていた。しかし、貴美のために引くことは出来ない。
「俺、あいつの好みは完璧にわかってる。だから、あいつがお前にのぼせ上がるようなビジュアルにしてやれると思うんだ! もう一度、告白してみねぇか?」
「もう、りっちゃんたら…… あたしがこうやって塞ぎ込んでるの見て、こんなこと言ってくれたんでしょ? 昔から優しいんだから…… あたしに向ける優しさの1%でも女の子に向けてあげて欲しいな…… こんなんだから年齢≒彼女いない歴なんだよ」
璃音は外見も悪くないし、人当たりも良い。しかし、なぜか女性にはとんと縁がなかった。その理由は誰にもわからない。幼馴染である貴美にも、親友である璃音にも、本人でさえも。
「うるせぇな。いいから明日から俺の言う通りにしろ。一ヶ月後にはあいつが惚れて惚れてたまらないいい女になってるからな」
とは、言ったものの…… 璃音は女性の美容に関してはズブの素人。何をしたらいいかがわからなかった。美奈人の好みのタイプはわかっているが、その外見に至るためには何をしたらいいかがわからない。どうしようかと途方にくれていると、コンビニエンスストアで偶然美容雑誌を見つけた。週刊漫画やゲーム雑誌しか読まない璃音にとっては全く畑違いの乙女の園のようなもの、しかし、情報は得なければいけない。璃音は美容雑誌を資格試験の問題集を読み込むかのように深く読み込むのであった。
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