for you

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 璃音が特に注目したのは「ニキビケア」だった。貴美の顔には頬を中心にニキビが覆っている。陰口を言う奴らに同意するわけではないが、そのニキビがたこ焼きの焦げ目に見えるのも仕方ないだろう。まず、ニキビの処理を始めることにした。とりあえずは立ち直った貴美を前にカウンセリングのようにフェイス・トゥ・フェイスで座り合いヒアリングを行う。 「あいつの付き合った女、みんな肌キレイだったな。白磁の肌って言うのかな? 顔もナチュラルメイクで十分なぐらいにキレイだった」 「駄目じゃん、あたしの顔…… ニキビでびっしりだし…… 初めから勝負にならないってことじゃん…… やっぱりあたしなんて……」 「まず『あたしなんて』なんて弱気なことを言うな。こんな弱気な女、あいつどころか俺だってゴメンだぞ」 ニキビがコンプレックスになって弱気になっている。そう思った璃音はその原因であるニキビをどうにかすることにした。雑誌の受け売りを必死に頭の中から引き出す。 「弱気なのは、人が持った気性だから仕方ない。それで、ニキビなんだけどな。いつも顔をどんな風に洗ってる?」 「朝起きた時と、お風呂と、寝る前の三回洗ってる。ニキビ憎しとして潰れるようにゴシゴシ…… ニキビを潰して『ぶじゅ』って膿が出るのが気持ちいいのよね」 いきなり雑誌に書かれていたNG行為をやってるじゃないか。璃音は貴美に呆れの感情を覚えた。 しかし、彼女にとってニキビは憎むべきものでコンプレックスの原因と考えるとわからないことはない。璃音は優しく貴美のニキビケアを否定するのであった。 「あのな、ニキビを潰すと膿だったり汁が出るだろ? それは皮膚のシミになるし、新しいニキビの呼び水にもなるんだ。だから潰すのはやめろ、いいな? 洗顔のやり過ぎも顔を擦る回数が増えるだけでニキビを潰すことに繋がる。ニキビを気にせず普通にクリーム塗って顔洗うだけでいい」 「顔触ってニキビの隆起に触れると気になるし」 「気にするな。いいな? 潰しすぎて一生モノのシミや傷跡になるかも知れないんだぞ。もし潰したら速やかに綿棒でトントンって吸い取ってコットンを被せて膿が肌に広がらないようにすること! これで出来た傷口は小さいもんだから一日二日で塞がるし、すぐに消えるから!」 「うん…… 顔触っただけで気になるけど、努力する」
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